「先進医療の基礎」を知る講座

先進医療とはどんな医療でしょうか。

生命保険に入るときにそんな特約があるときいた事はありませんか。

今日は先進医療とはどういったものか、また気になる治療費などについて紹介していきます。

先進医療とは

大学病院や研究機関などによって研究開発された最新の治療法のうち
標準的な治療法として公的医療保険を適用すべきか検討中の医療のことです。

例えば重い病気や治療の難しい病気になったときに

治療効果の高い最先端の医療を受ける場合がそれに当たります。

最先端医療の中には以前は治療が難しいと言われた病気を

体に負担の少ない方法で治療できるものがあるのです。

先進医療制度とは

患者の費用負担を軽くしながら最先端の医療を受けられる制度です。

最先端の医療が公的医療保険制度の対象となる保健医療となるまでは大学や企業医療機関等において広範囲での治療や検査を行い、安全性や有効性が確認される必要があるため長い期間がかかります。
また最先端の医療の全てを保健医療とするには国の医療費の面から見ても無理があります。そのため最先端の医療の多くは保険医療ではなく公的医療保険が適用されない自由診療となります。
日本では原則として混合医療が認められていないため自由診療を受けると一般の診察や検査入院費用なども含め患者さんは全額自己負担しなければなりません。
そこで患者の負担を少しでも軽減して最先端の医療をできるだけ早く受けられるようにした制度が先進医療制度です。

先進医療の技術料は自己負担

先進医療は保険診療と自由診療の併用を認めた「保険外併用療養費制度」の対象となっています。

がん治療にはいろいろな治療法がありますがよく知られている治療法として
X線、ガンマ線があります。

一般的なエックス（Ｘ）線治療では、がん細胞と共に周囲の正常な細胞にも放射線が当たり、人によっては吐き気などの副作用が起こります。

がん治療の最先端技術

粒子線治療(重粒子線治療、陽子線治療)

特徴

粒子線治療は手術が出来ない場所にできたがんや
抗がん薬の効きにくいがんなどにも有効な治療法として注目されています。
粒子線治療は、狙ったがん病巣の位置で線量が最大となり、病巣を突き抜けた瞬間、
線量はゼロになります。
がん細胞に狙いを定め、周辺にある正常細胞のダメージをより防ぐことができるため、
副作用は軽くなると言われています。

粒子線治療は体の奥にあるがんや手術では
難しい位置にあるがん細胞にピンポイントでダメージを与え
周辺の組織を傷つけないようにすることができます。

重粒子線は、X線や陽子線などによる放射線治療と比べて、
がんを殺傷する能力が強いため、今までの放射線治療が効きにくかった
肉腫など難治性のがんにも効きます。

メリット

• 痛みがほとんどない
• 高齢者でも安全に治療を受けることができる
• 傷跡が残りにくく後遺症もほとんどない
• 周辺の組織を傷つけることがほとんどない
• 早期なら根治が可能
• 治療困難な深部ガンにも適用できる
• 社会復帰までの期間が短い

デメリット

• 治療に高額の費用がかかる
• 治療を受けられる医療機関が限られている
• エックス線治療など他の治療との比較試験があまり行われていない

先進医療を受けたときの自己負担額はいくらになるのでしょうか

具体的な例を使って計算してみました
【先進医療の重粒子線治療を受けた時】

公的医療保険の被保険者Aさん（標準報酬月額28万～50万円）

1ヵ月の総医療費が450万円そのうち先進医療にかかる費用が314万円だった場合

総医療費から先進医療にかかった314万円を引いた、残りの136万円の自己負担分3割は
40万8千円になります。この40万8千円には高額医療保険制度が適用されます。
計算式に当てはめると

●高額医療費の計算式
80,001円+(医療費− 267,000円)× 1%

80,00円+ (1,360,000円− 267,000円)× 1% = 91,030円⇐自己負担限度額になります。

以上の結果からAさんの自己負担額を計算します
3,140,000円+91,030円＝3,231,030円(自己負担額）
※この他　交通費や入院時の食事療養費、差額別途代等がかかります。

その他の例（治療費の技術料）

・小児に発病することが多い膀胱尿管逆流の防止術→247,090円

・子宮を温存し妊娠・出産の可能性を残す子宮腺筋症核手術→301,000円

ニュース

前立腺がんに対する重粒子線治療は2018年4月から保険診療となりました。

先進医療を受けるときは

先進医療を受ける場合であっても、病院にかかる時の手続きは一般の保険診療の場合と同じで、
被保険者証（老人医療対象者は健康手帳も）を窓口に提出します。

先進医療は、一般的な保険診療を受けるなかで、患者が希望し、
医師がその必要性と合理性を認めた場合に行われることになります。

先進医療を実施している医療機関は

令和2年8月1日現在　第２項先進医療技術 【先進医療Ａ】 23 種類、159 件
令和2年8月1日現在　第３項先進医療技術 【先進医療B】 57種類、589件
になっています。

厚生省HPより一覧をみることができます。

先進医療を実施している医療機関の一覧｜厚生労働省

先進医療を実施している医療機関の一覧について紹介しています。

www.mhlw.go.jp

2006年10月に先進医療制度が始まって以来、利用者は2019年6月末時点で

3万9千人を超え先進医療が身近になってきたことを表しています。

もし先進医療を受けることになったら、必ずとは言えませんが、
高額になり、経済的負担を強いられることになります。

先進医療特約にはいっているのであれば、こうした医療が受けやすくなり、
患者の経済的負担が軽減されます。保険会社によって違いはありますが、
基本的にこの特約を付加するために必要な保険料は月額100円～200円程度です。
思っていたより高くないですね。

医療技術は日進月歩で、進んでいます。最近では手術用のロボットを用いた手術などもあり、
かつては治らなかった病気も治るようになったり、またこうした先進医療を受けることで
身体的負担が軽くなったりと私達にとっては心強いです。

病気にかからないのが一番いいのですが、もし自分や家族がかかったときの知識として
先進医療を選択できる事をこのブログを読んで覚えておいてくだされば嬉しいです。